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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

中小企業経営者の保険
                                    摩虎羅大将

 今回は中小企業経営者によく利用される2つの保険・共済について述べてみたいと思います。

法人契約の社長の生命保険

 まずは法人契約の、社長の生命保険について述べます。
 
法人契約の、社長の生命保険加入は85%で、平均加入件数は2件です。加入目的の@77%が死亡退職金の準備、A53%が社長死亡時の運転資金の確保、B41.6%が社長の退職金の準備、C35%が節税対策です。

 これらの目的を満たす一般的な保険が以下です。

長期平準定期保険
 契約時の保険金額が、期間中一定です。終身保険や養老保険と同じような貯蓄性を持ち、かつ、定期保険の税法上のメリットがあるため、法人向けの保険に多く利用されています。

 逓増定期保険(ていぞうていきほけん)
  契約時の保険金額が、 年を経るごとに一定金額まで増加していくものです。長期平準定期保険と同様に、貯蓄性を持ち、かつ、定期保険の税法上のメリットがあります。退職時期をターゲットとして含み益を作り、解約返戻金を退職金支払いの時期に解約によって資金を活用することができます。ただし、 契約を放置していると、解約返戻金は減少していき、最終的には0となるため,解約返戻金や含み益の推移を把握しておくことが必要です。

 定期保険(無解約返戻金)
  安い掛金で、大型保障を確保出来るため、中小企業の経営をさせる目的にも、税制優遇の目的にも、最もかなった保険です。しかし、貯蓄性がないため、含み益を持つことや、社長の退職金準備・資産形成にはなりません。

中小企業退職金共済

 次に中小企業退職金共済について述べます。
 加入目的は従業員の退職金支払い原資確保のためで、税制でも優遇されています。

 中小企業退職金共済制度は、中小企業退職金共済法に基づく、中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。その意味で、安全・確実で、税制も優遇されていて、有利です。管理が簡単な退職金制度が手軽に作れ、従業員の福利厚生を効率的に高めることができるので、経営的にも有効です。

 新規加入の助成
  新しく中退共制度に加入する事業主には 1)掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者については、(1)に掛金月額2,000円の場合は300円。3,000円の場合は400円。4,000円の場合は500円を上乗せして助成します。 (※ただし、次に該当する事業主は、新規加入助成の対象にはなりません。 同居の親族のみを雇用する事業主。社会福祉施設職員等共済制度に加入している事業主。適格退職年金制度から移行してきた事業主。)

 増額の助成
  掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を増額月から1年間、国が助成します(20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。 ※同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象にはなりません。)( ※中退共制度に加入した企業に対して、兵庫県では加西市、丹波市などが、独自の補助金制度を設けています。)。

 税法上の特典:掛金助成制度
  中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります(※資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されますのでご留意ください。)。

 過去勤務期間の通算は、企業間を転職しても可能で、特定業種退職金共済制度や特定退職金共済制度とも通算できます。退職金は、退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます。

 この2つの保険・共済は経営者と従業員の生活設計を支援しながら、国の補助や、税制面の優遇があるので、利用目的を明確にしながら、上手に利用したいものです。

出典:株式会社セールス手帖社保険FPS研究所「経営者従業員のためのデータ集―マネジメントデータ&ガイド―」、株式会社タックス・コム発行 小山 浩一著「中小企業のための保険講座」、インターネットサイト「法人保険の楽園」敬称略

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