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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

経営革新計画における企業評価について
                              中小企業診断士 松田良一


1.経営革新計画の内容…中小企業新事業活動促進法の場合

 中小企業支援策のなかでとりわけ経営革新計画に係る支援策に注目が集まっている。
 その法令のひとつ、中小企業新事業活動促進法においては以下の計画を策定・申請し、審査を経て支援の採否が決定されるシステムとなっている。

事業者にとって新たな事業活動であって、以下の各類型の事業を含むこと。
1)新商品の開発または生産
2)新役務の開発または提供
3)商品の新たな生産または販売の方式の導入
4)役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動

また、支援策として申請された計画が審査された結果、評価が高い場合は低利融資や高度化融資制度、中小企業信用保険法の特例等の支援策を受けることができるとされている。

2.申請必要書類と主な審査基準(兵庫県公式HPより抜粋)

  上記の計画書類に加えて、定款、最近2期間の事業報告書、貸借対照表、損益計算書が主たる必要書類であり、計画の主な評価(審査)チェックポイントは以下のようである。
@取り組みに新規性・独自性があることを明確に書いているか。
A取り組む新事業の市場規模、競合する他社等の状況を把握し、書いているか。
B取り組みの実現性(単価、売上数量、資金調達等)を書いているか。
C付加価値の伸び率は年間3%以上となっているか。
(3年なら9%以上、4年なら12%以上、5年なら15%以上)

D経常利益の伸び率は年間1%以上となっているか。
(3年なら3%以上、4年なら4%以上、5年なら5%以上)

3.関係支援機関セミナーでの議論とその後の感想

 経営革新に関するセミナーが開催され、参加者と関係支援機関で以下の議論があった。
 評価はいずれも点数を付すこととされる。公表されている計画の主な審査基準のうち前記2.@〜Dはいずれも計画内容についての評価であるが、最近2期間の貸借対照表や損益計算書については過去情報である。点数評価の場合、財務内容が良好な企業の点数が高くなるが、資金余力が乏しくとも潜在的な成長力があり有望な企業が選考から漏れてしまうのではないか、という意見があった。
 これに対し関係機関からは、中小企業支援策は、かつての経営資源の不足する中小企業に対して幅広く支援する考え方から経営努力が認められる企業を支援の対象として絞り込む方針に転換している。従って補助金、融資等の支援において財務内容の優良性も重要な評価対象であるとの回答であった。
 一方審査ポイントの@〜Dはあくまで書類による評価であり、現地調査や経営者ヒアリングなど多面的な評価によらないことも正当な評価として有効かどうか、という疑問が残る。計画の新規性・独自性あるいは実現性について文書でアピールするためには、企画力、文書や図を用いた表現力がものをいう。逆に言えば、如何に良い企画・アイデアがありその具体化する潜在能力があっても、文書で表現できていなければ選外となる。

4.評価を通じて思うこと

 上記の議論を通じて、審査し評価することの困難さを感じる。入試や企業の人材採用エントリーと同様、書類審査し点数評価することは手段として有効であるとは思う。書類審査以外の方法を採用する場合はコストが膨大にかかり予算不足や支援対象企業数を増やせない、などの問題が想定される。 
 しかし、そのような欠陥がありたとえ対象企業が減少しても、効率は良くないが経営者ヒアリングや現地視察などを加えることで評価していくことのほうが結局は必要な所に必要な支援が届くのではないかと思う。一方、創業後の企業を主な対象とする経営革新とは直接関係のない支援策であるが、新規創業は経済成長・雇用の増加などその有効性が高い。様々な創業支援策はあるが、新規創業が経済を下支えするほどには到っていない。 創業独立やそのための転職が永年勤続より不利とならないようになるには長い年月がかかるように思われるが、やはり重要な課題であることに変わりない。経営革新計画と同様に改めて新規創業支援策の重要性についても考えさせられた次第である。

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