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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

地域経済と協同組合
                              中小企業診断士 古野健治

神戸新聞の新年社説より

 神戸新聞の201413日の新年社説は「協同組合の未来」と題して、兵庫県但馬地方で昨春設立された労働者協同組合(ワーカーズコープ)の「Next Green 但馬」の活動を写真入りで紹介している。働き手でもある組合員数名が、豊岡市竹野町の放置森林で、軽トラックとチェーンソーで小規模な「自伐林業」に取り組み、間伐材を薪にし、自然エネルギーとしてボイラーやストーブの燃料として供給するとともに、シイタケと原木の販売、養蜂、広葉樹の精油その他「森の百業」をスローガンに森林資源の加工やサービスなど「森の6次産業化」をめざす多様な活動を行っている。担い手不足などで利用されなくなった森林や農地が増え続ける一方で、就職氷河期で働き場所のない若者も増加している。

 神戸新聞は、大企業と大都市優先の安倍政権の経済政策は地域経済にとってはマイナスであり、中小企業や地域は生き残るためには身近な資源を生かして仕事と産業を創出していくべきだと主張する。共同出資して、地域に必要な事業を立ち上げ、働き、自ら経営するこうした協同組合起業が全国に広がり、現在13千人が働いているという。

 協同組合学会の報告より

 昨2013105日に、東京の明治大学で開催された日本協同組合学会第33回研究大会でも上記の但馬地方の森林事業について報告が行われた。きっかけは2000年前後の就職超氷河期以降の、若者の働き場・居場所がないという状況への危機感だったという。小泉政権下で「勝ち組・負け組」や「非正規雇用」などが進行したことは記憶に新しい。若者サポートステーション(サポステ)の活動が始まり、職業訓練などが取り組まれた。豊岡市では「環境と経済の共生」をテーマとしてコウノトリ保護の事業が取り組まれていたことから、起業を求める人々が市に働きかけ、廃校の旧大森小学校跡を拠点とした職業訓練が行われた。その受講者たちを中心に、「Next Green 但馬」の活動や、森の学校「だんだん」(若者の居場所づくり)など地域の活動が広がっていったという。この学会では、宮崎県での小水力発電事業などエネルギー問題や、TPPによる食糧自給問題なども討議された。私も別途、介護など社会福祉問題について報告を行った。

 国際協同組合年フォーラムより

 20121128日にポートアイランドの神戸国際会議場で、国連の「協同組合年」を記念するアジア・太平洋地域各国代表によるフォーラムが開催された。その特別講演で、評論家の内橋克人氏は福島原発事故以降の「不安社会」の克服に向けて、社会学者テンニースのいう「ゲマインシャフト」「ゲゼルシャフト」を超える「第3の共同体」として「使命(ミッション)共同体」を展望する必要がある、として、今後の日本社会には3つの自給が大切だと指摘した。すなわち、FEC自給圏である。「F」はフード・食糧・農林水産であり、「E」はエナジー・エネルギーであり、「C」はケア・介護・共助である。

 安倍政権は、強い部分をさらに強くすれば、中小企業や地方にもその恵みが廻ってくると発想する。しかしそれらは幻想に過ぎない。地域経済や中小企業は、自らの努力で生き残りの道筋を描き出していくほかない。食とエネルギーと介護の自給圏構築の試みは、少子高齢化で存立基盤の存続が困難になっている農協(JA)や森林組合にも新しい展望をもたらす可能性もある。中小企業も参入して、地元のエネルギー利用を促進する技術開発はできないのだろうか。そうした面での指導や助言など、中小企業診断士の貢献も期待されるところである。

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