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神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

業(なりわい)と志(こころざし)
                                     Web担当

はじめに

 企業も個人も生活し、生きていくために生業(なりわい)を行います。高度に分業化された現代社会では、自給自足は不可能とまでは言えないとしても難しく、誰もが、なにがしかの役割を担わざるを得ない。厳しい競争社会の中で、それぞれの生業を成り立たせること自体も恐ろしく大変で、そして、その生業は世の中に必要とされるものでしか成り立ち得ない

生業とは・・・・

 生存していくために生業は為さざるを得ないものだとして、企業は、そしてその中の個人は日々、悪戦苦闘しています。当たり前のことですが、生活原資として、報酬としてお金をいただくことは、どのような職業、仕事であっても簡単なことではありません。失われた20年という日本の経済状況の中で、生業の現場=職場はストレスフルな場所となり、旧来の真面目な日本人の仕事観と相まって、生業=仕事とは厳しいもの、つらいもの、我慢して耐えるもの・・・・といった、認識が広がっているように感じます。
 しかし、そのような仕事観はあまりに悲しく、みすぼらしいと感じます。

人を動かすもの

 生業の現場で厳しい局面が多々あるとしても、どのようにすれば、人は生き生きと働くことができるのかと考えたとき。志の存在の大切さに気づきます。

 お客様にお叱りを受けたり、身勝手な要求を突きつけられたり、職場がギスギスしていたり、上司から理不尽な指示があったり、部下・同僚は動いてくれなかったり・・・・、生業の現場では、日々、予測できない、耐えがたいことがつきものです。けれど、「明日は今日より良くなる」「このことがどこかで世の中を良くする役に立っている」「自分自身の成長の糧になっている」・・・・と感じることができれば、人は厳しい状況をも楽しむことができるものではないでしょうか。

 そういった、夢や希望を端的に言葉にしたものが志であり、志は、その組織に属するメンバー個々の、とりわけリーダーの「行動」によって担保されると考えます。

志とは

 志とは「心指し」こころの目指すべき方向を指し示すことだと考えます。わが組織・わが社はこの生業を為すことによって、何を目指すのか。企業では「理念」とか「ビジョン」「クレド」とよばれるものです。

テッセイの事例から

 最近、この理念経営で注目されている企業の一つにJR東日本テクノハート通称「テッセイTESSEI」があります。主な業務内容はJR東日本の新幹線車両の清掃です。会社の理念は「清掃を通じて、感動と思い出を提供する」とされています。
 テッセイの従業員は、正社員と「パートナー」と呼ばれるパート社員を含め約820名。平均年齢は52歳。女性比率は約5割。テッセイの「お掃除の天使たち」が1日に清掃を行う車両本数は約110本、車両数は約1300両。基本編成は1チーム22人で、多いときには各チームとも1日約20本の車両清掃を担当しているそうです。
  たかが『掃除』されど『掃除』。自分たちがお客様の『おもてなし』をするんだという意識の変化で、最強の現場力・チームワークを生み出したテッセイの数々のエピソードと、JR東日本内でも決して評判がよくなかったという「普通」の清掃会社が、「清掃の会社」から「おもてなしの会社」へと進化していった軌跡は『新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?』(遠藤功・著/あさ出版)に詳しくつづられています。

 ここで示されているのは、社員を輝かせようと考える経営層=リーダーが、目標=理念を掲げ、その言葉に違わぬ実践を積み重ねることで、会社が変わっていったという見事な実例です。

 新幹線が停車しているわずか7分間で車内清掃をテキパキと、それでいて丁寧にこなすテッセイの仕事力はハーバード大学のケーススタディにも取り上げられるとのことです。

 理念こそ掲げられていても、その行動が不十分であったり、理念と相反したりしているために、成果に至っていない企業が多いのではないでしょうか。心すべきことと考えます。

生業の中に志を

 偏見とお叱りを受けるかもしれませんが、とかく評価されることの少ない清掃のような仕事でも、人が生き生きと輝く職場にすることができるというこの実例は、すべての会社・職場は、志とすぐれたリーダーシップ、メンバーシップの相互作用で変わることができるという希望を与えてくれます。
 厳しい時代の中にあっても、人がいきいきと輝いてハタラク場をつくるお手伝いがしたい。切にそう考えています。

NPO法人 ビジネスアシストこうべ