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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

『経営と人間』印象深い言葉から
                                       TM

 
 最近読んだ(株)経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山和彦氏の「会社は頭から腐る」(企業再生の修羅場からの提言)から。

 本書は、産業再生機構のCOOとして41社の企業再生を手がける過程で経営や企業統治に責任を持つ人々の質の劣化を感じ、「経営と人間」、「経営と戦略」、「会社の腐り方」「現場のカルテ」、「ガバナンス」、「リーダーの鍛え方」の視点から日本的企業統治システムの特徴や抱える課題とその解決方策をまとめたものです。

 私が若かりしとき「魚は頭から腐る」をもじって「組織は頭から腐る」的な本を読んだことがあります。内容は全く覚えていませんが、「組織は如何にあるべきか」は古くて新しい課題であることは間違いないようです。

 以下、「経営と人間」、「経営と戦略」、「現場のカルテ」から印象深い言葉を抜き出してみました。
 
・ほとんどの人間は土壇場では、各人自身の動機づけの構造と性格に正直にしか行動できない。再生の修羅場では「性弱説」に立って人間を見つめたときにはじめて多くの現象が理解可能となってくる。

・昨日まで格好よさげに説教をかましていたオッサンが、突然、あれやこれや言い訳を並べて好条件の競争相手に転職していく。他方で、さして目立たず、日ごろは高学歴の管理職のオヤジどもから定着率が低くて困るといわれていた女性職員が、驚異的な粘りを見せて現場を守りきる。人間性の現実は調子のいいとき、余裕のあるときには見えてこない。・・・ガチンコの局面では、人間は本性をさらけ出すところまで追いつめられて戦っている。

・将来に向けて戦略を語る際には・・・そこで問われるのは予測できない状況変化の察知能力であり、適応力であり、戦略そのものの柔軟性である。顧客や競争相手の現実、そして自らの現実について「見たい現実」ではなく、「ありのままの現実」を見ることができるのかこそが問われる。

・戦略の有効性を検証する唯一の方法は、実行してみることだ。実際にやってみるしかない。戦略は・・・あくまで仮説である。仮説があるからこそ、正しい検証が可能となる。

・人間は神様ではないので、予想したことが外れものだ。そこでフィードアップがかかるか否かが企業の成否を分かつ。ここで冷静で客観的な敗因分析ができる企業が勝者となる。このフィードバックという作業は、結果が予想以上に上がった場合も必要となる。結果オーライは、一過性の勝負であれば通用するが、仮説・検証のプロセスを回す経営の本質からいえば、戦略的とは言えない。・・・よい会社というのは、このような検証が徹底的に行われている会社である。
・うまくいっている会社とそうでない会社の違いは、戦略立案の優劣ではない。PDCAがよく回っている会社がよい戦略にたどり着くのである。逆にいうと、戦略が仮説にすぎないという本質を理解し、PDCAを回すことに精力を注いでいる企業こそ、戦略経営が実践されているといえる。・・・PDCAを回す力こそ組織能力である。

・ダメな会社は、失敗を恐れるあまり、緻密な戦略をつくろうとそこに膨大な時間と労力をかけている。とてつもない時間と労力を使って延々と議論しているのだ。そして、結局何も方針がきまらないのだ。・・・合理的であるべき意思決定プロセスに、組織の情緒的なバイアスがかかり、議論しすぎて何もできなかった結果であろう。

・実は企業の強さを分けるのは、PDCAの回転力の差なのである。初期的な戦略施策のよし悪しなどよりも、この違いのほうがはるかに大きい。

・現実の事業再生、現実の経営改革は・・・「当たり前のことを当たり前にやる」につきる。難しい戦略論や技術論、経営論をごちゃごちゃいう前に、そもそも当たり前のことが当たり前にできなかったから再生会社、再生事業になっていることを忘れてはならない。当たり前のことが当たり前にできるかどうかは、事業体のトップからラインまでの組織の人材のDNAに規定される。・・・そして再生とは、この組織と人材の習慣を変えることだ。これには地道に根気よく、会社を、組織を、人間を、変えていく努力を積み重ねるしかない。・・・しかし、本当に汗をかいてやるべきことは、日々の様々な問題にぶつかりながら、解決のための仮説を考え、実行し、成果を見てまた修正をかけるという、PDCAサイクルを地道に繰り返すことである。

 同質な人間しか認めていない企業は危機に際して、的確な経営決断・判断をできる幹部(中高年)はほとんどいない。組織の中の予定調和を主な職務とするようになってしまっているため、組織の生産性は極めて低い。

 等々考えさせられる言葉の数々でした。


                                                   以上

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