本文へスキップ

神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

女性の活躍推進を考える
                              中小企業診断士 宮本哲也

 日本では少子高齢化が進行して労働人口が減少しており、安倍政権では「日本再興戦略」を打ち出し、「女性の活躍」を成長戦略の中核として位置付け、新たな商品・サービスの創出や、新たな成長分野を支えていく人材を確保していくためには、女性の労働及び経営への参加は不可欠であるとしている。そのため、経済界に対しては「2020 年に指導的地位の女性割合30%以上」とする政府目標の達成に向けて、上場企業において積極的に役員・管理職に女性を登用し、まずは、役員に一人は女性を登用するよう要請している。
 
 上記のような話が、最近、新聞などで多く報道されている。この話は上場企業、すなわち大企業が対象のように思えるが、実は中小企業にこそ重要な話ではないだろうか。今回は中小企業の視点から女性の活躍推進について考えてみたい。

何のために女性活躍推進を図るのか

 中小企業が女性活躍推進を考える場合は、まずは「労働力の確保」という観点があるだろう。今後労働人口の減少が見込まれる中、事業に必要な人手を確保するために、これまで男性しかいなかった職場でも、これからは女性も貴重な労働力として考えなければならない。
 しかし、労働力の確保よりもっと重要なことは、「労働力の質」という観点である。一般的に女性の活躍推進の効果として以下の3つがあると言われている。

@ プロダクトイノベーション(女性の視点を活かした商品開発等)
 女性顧客の開拓に向けて、顧客ニーズを的確に把握した商品やサービスを創出する。
A プロセスイノベーション(女性の視点を活かした販売戦略等)
 女性社員の発案によるプロセス改善や新たな販売手法・販路の開拓を行う。
B 外的評価の向上(人材確保における優位性等)
 女性の活躍推進に積極的に取り組む企業としての認知度を向上させ、採用活動における優位性を高めるほか、女性の活躍により顧客の満足度も高める。

 これらは、中小企業にこそ重要な視点ではないだろうか。新たな商品やサービスを創出したり、業務手順を改善したりすることは、固定化されたメンバーではなかなか思いつかないが、そのような職場に女性というイノベーター(革新者)が入ることにより、新たな視点からアイデアが生まれることが期待される。現状を変えようと思ったら、異質なものを取り込むことが有力な方法になる。

女性の活躍を推進するためには

 このように、中小企業にとっては量的にも質的にも女性を積極的に採用することはメリットが大きいと考えるが、これまで女性の採用が進んでいなかったのは、それを阻害する様々な要因があったからである。その中で次の2点が大きな要因であると考える。

@ 長時間労働をはじめとする労働環境
A 「男性は仕事、女性は家庭」という固定的役割分担意識の定着

 長時間労働は育児期間中の女性には特に厳しい労働環境であり、これらを改善していかなければ継続雇用が難しくなり、労働力の確保に支障をきたすことになる。これは育児期間中の女性だけの問題だけでなく、要介護者の増加による男性の介護離職を防止する観点からも重要である。
 しかし、より重要なことはAの意識面である。いったん刷り込まれた考え方はそう簡単に変わるものではないので、この意識の定着を払拭するのはかなり難しい。だが、外部環境は確実に変化している。トップ自らが意識を変え、女性の活躍推進に主体的に取り組むことが、企業の存続・発展には不可欠ではないだろうか。

NPO法人 ビジネスアシストこうべ