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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

人手不足時代に思うこと
                                    WEB担当

はじめに

 今年6月の有効求人倍率は1.19倍。一昨年までは0.98倍とかろうじて買い手市場だったものが、昨年からは恒常的に一倍を超え、売り手市場になっています。正社員の有効求人倍率は0.75倍と甘くはない状況が続いていますが、パート・アルバイトなどの非正規社員の有効求人倍率は2倍を超え、特に非正規社員の比率の高い流通・サービス業を中心とする労働集約型産業は、厳しい人手不足時代を迎えています。

求人コストの上昇

 人が採用できなくなって、企業がまず行ったことは、採用時給のUPと求人広告費の増加です。時給のUPは特に学生アルバイトには効果があり、そのため、大阪エリアでは大学生の時給で1000円を超えるところが普通になってきました。権利意識や労働法の知識も豊富になり、かっては考えられなかった学生アルバイトが有給休暇を取得するのもいまや常識になりつつあります。そうやって採用したアルバイトも長続きはしてくれない・・・。
 また、求人広告費を採用者数で割った採用単価も上昇し続けており、求人媒体別では、特に紙媒体(新聞折り込み求人広告や駅置きのフリーペーパー)の効果が低下し、ネット媒体(求人サイト)へ求人の主戦場は移行しつつあります。
 
求人条件の緩和

 さらに、求人条件の緩和もこのところ、見受けられることです。従来、採用してはいなかったシニア層(60代以上)も採用可能とし、中には70代でも可とする求人も現れてきました。従来は日本人のみとしていた対象者を外国人(留学生)にまで拡大し、やっと必要人員を確保している製造現場も沢山出てきています。
 就業日数、時間帯、曜日についても許容範囲を拡大する競争が始まっており、土日が忙しい外食産業でも、「平日のみ、お好きな曜日・時間帯で働けます!」という求人広告まで見かけるようになっています。
 日本中で、とりわけ非正規社員の領域で、人の取り合いが始まっています。
 
迂遠に見えても

 2000年代を通じて、不況と労働者派遣法の改正などを通じて、安価な労働力を容易に活用できる時代が続いてきました。しかし、少子高齢化がいよいよ現実のものとして立ち現われ、そうした時代は、外国人労働者の受け入れ拡大でもしない限り、再現しないものと考えられます。
 選ぶ側から選ばれる側に立場が変わった企業は、どうやって求職者に選んでもらえるようになるべきでしょうか? とりわけ人目につきやすい流通・サービス業にあっては、良い評価を顧客(潜在求職者)から獲得し続けることが、遠回りに見えても、根本的な対策であると考えます。
 「あのお店の人はいつもイキイキと働いている」「お客さんにいつも元気なあいさつをしてくれる」「あの会社の商品やサービスなら安心だ」「どうせ買うならあの従業員さんから買いたい」そのように言ってもらえる人や組織(企業)であれば、このような求人採用困難な時代であっても、何とか必要な人員が確保できるものです。
 事実、流通・サービス業で一番、採用率(採用者/応募者)の高い求人媒体は自店ポスター・従業員の紹介・自社求人サイトの三つなのです。これらは顧客を従業員に変えた実例といえるでしょう。
 
 こつこつと着実に、顧客の評価を積み上げること、このことこそが、企業業績にも、求人採用にも通じる王道だと考えます。 


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