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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

日本のプログラミング教育に思うこと
                             中小企業診断士 陸井浩三

ICT関連産業の人材不足

 ICTがビジネスや暮らしの基盤となっている中、ICT関連の人材不足が世界的規模で懸念されている。日本では2019年をピークにICT関連産業への入職者が退職者を下回り、2020年には約37万人、2030年には約80万人の人材が不足すると予測されている。
 加えて、ICT関連産業の従事者の平均年齢も上昇を続けており、IOT、AI、ビックデータといった比較的新しいICTの需要に取り組むための、柔軟で新しい知識と感覚を持った質的人材も不足している。こうした背景に応じるように、総務省は2025年までに最大200万人規模の人材創出する方針を示していて、現在、中学校の技術・家庭科では、2012年より「プログラミングによる計測・制御」が必須科目になっている。小学生を対象としたプログラミング教室や講座も盛況のようだ。また、米国、イギリス、アイルランドなど世界中でもプログラミング学習が広がっている。

プログラミング教育の有益性

 しかし、子供に対するプログラミング教育は有益なのかどうかは議論が分かれるところで、「論理的思考力を養うために有益」という意見がある一方で、「コーディング技術は時代によって変わるために無駄」などの意見もある。筆者の経験から、プログラミングを考えることはある意味パズルを解くことに似ていて、論理的思考を育てるのに役立つと思っている。それに、自動販売機や洗濯機まで身近な周りの電化製品がプログラムによって動いていることを実感し、意図したとおりに動かそうとすればどのようなプログラミングを書けばよいのかと考えることは、発想を豊かにし、クリエイティブな意識を育てることにもなる。
 このような「プログラミング的思考」とでも呼ぶ論理的、合理的な考え方を学ぶことは、今後ICTがどのように発展しても普遍的に求められる力であって、決して無駄にはならない。

日本の将来への期待
 今まで日本のICT業界は、主に「コスト削減、効率化」を得意としてきた。「新たな製品やサービス」を創出することでは、GoogleやMicrosoftを生み出した米国に明らかに後れを取っていて、次元の違うレベルにまで差がひらいているというのが実情だ。
 生まれたときからパソコンやスマホがある。それらを当たり前のように使いこなす子供たちが、改めてプログラミングを学ぶ始めることによって、論理的でクリエイティブな思考も持ち得ることができる。その彼らによって、日本でも新しい発想の新しいビジネスが数多く生まれる日が現れることを期待したい。


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