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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

M&Aは不幸か?
                             中小企業診断士 村上 顕

強い阪急

 春先であったでしょうか、梅田の本屋さんで阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)の80年の歴史の雑誌を購入しました。私は、南海(現福岡ソフトバンク・ホークス)ファンでありますが、子供のころ西宮球場の近くに住んでおり、阪急ブレーブス子供会に入っておりました。1年間、西宮球場と西京極球場の阪急主催試合を内外野無料(ちなみに阪神タイガース子供会では巨人戦が外野でした)で入場できます。いつも私が陣取るのは3塁側内野席でした。南海はもちろん、ロッテ(現千葉ロッテ・マリーンズ)、西鉄(現埼玉西武・ライオンズ)、東映(現北海道日本ハム・ファイターズ)近鉄(現オリックス・バファローズ)のいずれの試合も同じです。阪急は本当に強かったので、なんとか相手に勝ってほしかったのです。
 
最強のチーム

 あのころの阪急といえば、打順は変わっていましたが、大体のところでは、1番は、世界の盗塁王・福本、2番は、最強の2番打者・大熊、3番は、2000本安打の加藤、4番は、肩にあごを乗せて打つ独特の打法のホームラン王・長池、5番は、ひげの森本、6番は、外国人のソーレル、7番は、種茂、8番は、守備の名手・大橋、9番は、ピッチャー。恐ろしい打線でした。1点などは、福本がヒットで出たらすぐに取られました。日本シリーズでは巨人にボコボコにされましたが、長期戦だったらわからなかったのではなかろうかと思っている評論家も多数いるようです。ピッチャーも、350勝のガソリンタンク米田、速球王・梶本、アンダースローの足立、280勝超の山田とものすごい顔ぶれです。でありますから、ほかのチームが勝つ試合はめったに見られないわけです。我が南海も私の面前で勝ったのは1972年だったでしょうか、伝説のあの死んだふりのプレイオフ最終戦くらいではないでしょうか。野村克也監督(監督兼キャッチャー兼4番バッター。のちのヤクルト・阪神・楽天監督)の胴上げが瞼に焼き付いております。
 
まさかの身売り

 しかし、その強かった伝説を残したまま、平成の幕開けとともに、南海も阪急もなくなりました。いわゆる自前での事業承継ができなかったということです。M&Aで他の会社に引き継がざるを得なかったのでした。今の中小企業の多くが直面する課題にぶつかっていたのですね。阪急は、オリックスに、南海は、ダイエーへ。阪急は、オリックスに流れたうえ、近鉄との合併という2段構えのM&Aとなりました。南海は、ダイエーが再度事業継続に失敗し、またM&Aでソフトバンクへと身売りになったのでした。

プロ野球選手の幸せとは?

 しかし、両チームや選手が不幸であったかというと、微妙です。ファンの私などは南海や阪急のままで、西宮球場や大阪球場にいてほしかったですね。でも、選手や周りの関係者のことを考えると、今の福岡で愛されるようになったホークスの姿や満員のドーム球場で子供や女性ファンにつつまれて試合ができるブレーブスとバファローズの合併した姿。これでよかったのでしょうね。選手も安月給から解放されましたし。なんといっても、観客席は本当に大変な違いですね。あの当時、パリーグは選手の数と観客数が同じか逆転しているのでは?と疑うような試合が多々ありましたし、女性ファンなどほとんどいません。いるのは、カップ酒とイカ焼きをもったおっさんばっかりでした。もっとも、そのころでも近鉄の太田幸司や南海の島本耕平など例外的に女性が騒ぐ選手もいましたが。今の女性やちびっこファン、楽しそうな家族観戦のお客さんがたくさん押し寄せてくれる球場の様子とはえらい違いです。でも、おっさん時代も懐かしいのですが。

M&Aもやり方次第


 こう考えると、他人の手に渡る形のM&Aも悪いものではないということです。事業が続けられない場合は、引き継いでもらう人を外に求めることも大切なのでしょう。中小企業の場合も同じですね。一見、不幸のような見え方をしますが、実はそのほうがよかったということは多いものです。社員としても、各自が、実力をつけ、会社におんぶにだっこの社員を脱皮しておけば、困ることはありません。首になったという情報を聞きつけた瞬間にスカウトが来るような、どこででもやっていけるような真の実力を身に着けるように日々努力していればいいのです。何度も言いますが、超大企業の場合のこうなる確率は低いし、そうなっても退職金が大幅に上乗せになったりしますが、ほとんどの中堅や中小の会社はいざというとき、社員のことなど守ってはくれない(いや守ろうにも守り切れないといった方がいいでしょう)ということは理解しておかなければいけません。ある意味、自力救済あるのみなのが本当のところではないでしょうか。それから、プロ野球は外から他球団の選手を見て評価できます。同じような仕組みを企業でも作れないものでしょうか。そういう仕組みがあれば、他では役に立たなくとも、ほしい会社もあるでしょう。また、定年になってフリーエージェントになったとき、他の会社が手を差し伸べることも可能です。成果主義、自己責任という今の時代、このような仕組は、企業、従業員とも幸せになれる仕組みだと思いませんか?阪急の雑誌を読んで、そんなことを感じた次第です。 



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