今回は中小企業経営者によく利用される2つの保険・共済について述べてみたいと思います。
法人契約の社長の生命保険
まずは法人契約の、社長の生命保険について述べます。
法人契約の、社長の生命保険加入は85%で、平均加入件数は2件です。
これらの目的を満たす一般的な保険が以下です。
長期平準定期保険
契約時の保険金額が、期間中一定です。終身保険や養老保険と同じような貯蓄性を持ち、かつ、定期保険の税法上のメリットがあるため、法人向けの保険に多く利用されています。
逓増定期保険(ていぞうていきほけん)
契約時の保険金額が、
年を経るごとに一定金額まで増加していくものです。長期平準定期保険と同様に、貯蓄性を持ち、かつ、定期保険の税法上のメリットがあります。
定期保険(無解約返戻金)
安い掛金で、大型保障を確保出来るため、中小企業の経営をさせる目的にも、税制優遇の目的にも、最もかなった保険です。しかし、貯蓄性がないため、含み益を持つことや、社長の退職金準備・資産形成にはなりません。
中小企業退職金共済
次に中小企業退職金共済について述べます。
加入目的は従業員の退職金支払い原資確保のためで、税制でも優遇されています。
中小企業退職金共済制度は、中小企業退職金共済法に基づく、中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。その意味で、安全・確実で、税制も優遇されていて、有利です。
新規加入の助成
新しく中退共制度に加入する事業主には
(1)掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者については、(1)に掛金月額2,000円の場合は300円。3,000円の場合は400円。4,000円の場合は500円を上乗せして助成します。 (※ただし、次に該当する事業主は、新規加入助成の対象にはなりません。 同居の親族のみを雇用する事業主。社会福祉施設職員等共済制度に加入している事業主。適格退職年金制度から移行してきた事業主。)
増額の助成
掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を増額月から1年間、国が助成します(20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。 ※同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象にはなりません。)( ※中退共制度に加入した企業に対して、兵庫県では加西市、丹波市などが、独自の補助金制度を設けています。)。
税法上の特典:掛金助成制度
中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります(※資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されますのでご留意ください。)。
過去勤務期間の通算は、企業間を転職しても可能で、特定業種退職金共済制度や特定退職金共済制度とも通算できます。退職金は、退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます。
この2つの保険・共済は経営者と従業員の生活設計を支援しながら、国の補助や、税制面の優遇があるので、利用目的を明確にしながら、上手に利用したいものです。
出典:株式会社セールス手帖社保険FPS研究所「経営者従業員のためのデータ集―マネジメントデータ&ガイド―」、株式会社タックス・コム発行 小山
浩一著「中小企業のための保険講座」、インターネットサイト「法人保険の楽園」敬称略