本文へスキップ

神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

瞑想のすすめ
                              中小企業診断士 陸井浩三

はじめに

 最近ビジネスの世界で瞑想が流行しているそうです。瞑想をしている有名な経営者には、ビル・ゲイツ、故スティーブ・ジョブズなどが有名ですし、インテルのように会社をあげて瞑想を推進しているところもあります。一方で、瞑想というと宗教色の強い何やら怪しげなものを想像する人や、おたくやマニアに受け入れられるものを想像する人がいるかもしれません。
 しかし、実際に瞑想に取り組んでみると、合理的で科学的、宗教色の薄いことに気づくことになります。私は、毎日瞑想に取り組むようになって1年以上になります。まだまだ煩悩と雑念にまみれた生活は続いているものの、少しは自分の苦しみや迷いを客観的に眺められるようになってきた気がしています。

瞑想とは何か
 では、『瞑想とは何か』。
 それを簡単に言うと「思考を止めること」、「考えないようにすること」、「頭の中のおしゃべりをストップさせること」になります。絶えず浮かんでは消える思考や、それに伴って起こる悩みや苦しみなどの感情は、どれも本当の自分ではなく、浮かんでは消え、消えては浮かぶ「無常」なものとわかることです。

 もともと、瞑想はインドで始まったとされていて、紀元前25世紀ごろに栄えたインダス文明の遺跡には、座法を組み瞑想を行う人物の像があります。その後、インドの瞑想を基にして悟りに至った仏陀が、現在の瞑想の基礎を築きました。瞑想には、仏陀が築いた瞑想法、禅、ヨガやその派生したものがありますが、キリスト教やイスラム教など仏教以外の宗教にもでも瞑想のようなものは存在しています。

 瞑想にはこのようにたくさんの種類があるため、初めて瞑想をしようという人は、いったい何から試していいのかわからないでしょう。しかし、数多い瞑想の中でも、最近メディアで取り上げられることが多いのは「マインドフルネス」です。この「マインドフルネス」とは、正しくは「マインドフルネスストレス低減法」という心理学的治療の一つのことです。
 仕事、家庭、経済に関するストレスを抱えた人、慢性疼痛の患者、不安症やパニック障害の患者などに効果があるとされ、医学的治療効果だけでなく、健常人の生活の質を高める作用もあるといわれています。具体的な行動として、意識的に現在の瞬間、その時々に展開する体験に判断を加えず注意することに集中します。これは、もともと仏陀が始めた瞑想法が基本になっています。

 それでは、初めて瞑想をしようとする人のために、この仏陀の始めた瞑想方法を簡単に紹介します。仏陀の瞑想法の要諦は、自分の身体の動きに気づいていく「気づきの瞑想法」であり、具体的には「歩く瞑想法」と「座る瞑想法」があります。

【歩く瞑想法】
静かで落ち着ける場所で、数歩ほど歩けるスペースを確保します。
まっすぐ立って、ゆっくりスローモーションで歩きだします。
その時に「右足、左足」あるいは「歩く、歩く」などと心の中で自分の行動を感じます。感じにくい方は、言葉に直して心で実況中継してもよいでしよう。
数歩歩いたら、方向転換をして、「回る、回る」と行動を感じます。
方向転換が終わったら、また「右足、左足」と行動を感じます。
できるだけゆっくりと動くことを心がけます。
これが歩く瞑想法です。

始めるとすぐにたくさんの雑念が次々と湧いてきます。
雑念が沸いたら「雑念」「考えている」という言葉で対応して足に注意を戻します。
今まで通りの雑念の洪水に流されてしまわないよう、すぐに戻ります。
はじめての時は、10分ぐらいは試してみてください。

【座る瞑想法】

静かで落ち着ける場所を確保します。
座り方に明確な決まりはありません。イスに座ってもあぐらでも構いません。
ただし、背をまっすぐ伸ばすことに気をつけてください。
手は膝の上や、両足の付け根の当たりに自然に置いて静かに目を閉じます。
「呼吸」に注目します。
ゆっくり、呼吸します。
「吸う」、と感じて、吸う息を観察します。
「吐く」、と感じて、吐く息を観察します。
お腹が膨らむ、へこむことにも注意を向けます。
「膨らむ」「へこむ」と感じて、観察します。
観察する場所は、息をする鼻と、膨らんだりへこんだりするお腹です。
意識は、鼻とお腹を行ったりきたりします。
これが座る瞑想法です。

またすぐにたくさんの雑念が次々と湧いてきます。
雑念が沸いたら「雑念」「考えている」という言葉で対応して呼吸に注意を戻します。
はじめは15分ぐらい試してみてください。

瞑想の基本はたったこれだけです。
単純なことを続けることによって、自分の中にある静寂を発見します。
心の中のおしゃべりが止んだ内なる静けさを知ることができます。
たったこれだけのことですが、新しい自分を見つけられるはずです。
みなさんも、ぜひ瞑想してみてください。


 こころを鍛えなさい、
 汚れを落しなさい、
 幸せを、今ここで見つけるのです。 (仏陀)

NPO法人 ビジネスアシストこうべ