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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

撮り鉄歴43年の中小企業診断士
                                       魁

はじめに

私が鉄道の撮影に目覚めたのは中学2年だった昭和47年で、当時は京都の梅小路蒸気機関車館が出来たばかりだったこともあり、神戸の町にも同館に保存されていたC62型2号機が牽引する臨時SL列車「白鷺号」が年に数日走っていた。今のように情報も無い時代だったので、鉄道記念日など走っていそうな日の走りそうな時間に線路脇で待って撮影していた。
 当時は現役のSLが無くなる最後の時期でSLブームが起きており、私も高校1年の時には、春休みや夏休みを利用して北海道や九州などに撮影旅行に出かけて撮影に勤しんでいた。今では無くなってしまった夜行列車とユースホステルが定番の宿泊施設だった。
 雑誌も「鉄道フアン」などがあったが、今思えば不思議なのだが映画の専門雑誌を発行するキネマ旬報社がその名もずばり「蒸気機関車」という雑誌を発行していた。その後「SLダイヤ情報」という季刊誌が弘済出版社から発行され、全国のSL列車のダイヤが掲載されるようになり、撮影熱に拍車がかかった。なんせ、どの路線でどの形式が何時走るのかが手に取るように分かる優れものだったからである。この本と時刻表で何度撮影妄想旅行を作成したことか、しかもテスト前になると不思議と作成したくなる代物で、おかげで学校の成績は右肩下がり・・・。当時は50年近く写真を撮るなんて思ってもみなかったし、50歳を超えた自分を想像したこともなかった。
 
蒸気機関車誌の慧眼

 蒸気機関車誌の1979年5月号に、「1990年北海道の旅」という、SLが全廃された後に北海道各地でSLが観光列車として復活するという当時の常識で言えば夢物語のような短編小説が掲載されていた。私はこれを見て「ありえない」と一笑に付したのだが、現在の状況を見ると全国各地で観光目的のSL列車が走っており、本線走行可能なSLは15両もある。筆者の慧眼にただ感服するばかりである。
 その中でも、昨年から静岡県の大井川鉄道が保有するSLを改造して「機関車トーマス号」を走らせているが、予約が殺到しプラチナチケットと化した。今年はトーマスに加え、ジェームスも走らせるそうで、同社の新たな看板列車となっている。ただ、ロイヤリティの支払いなどの経費も嵩み、あまり収益は生んでいない模様である。大井川鉄道は、昭和50年からSLを走らせているが、当時同社は過疎化とモータリゼーションの進展による乗客減で存廃の危機に立っていた。その際、名古屋鉄道から派遣された白井副社長の大号令のもと、SL列車の走行を実現し苦境から脱出した。運賃だけでは走行経費が賄えず赤字となることからグッズや駅弁販売などあらいる増収策を考えだし、新たなビジネスモデルを築いたことで知られる。SL列車の主な乗客はバスツアー客で東京方面からの集客が好調だったが、観光バス運転手の運転時間規制が強化されツアーの運転手が2人必要になったことからツアーが半減し、第2の危機となっている。今年からはSL料金に加え、トーマス料金を上積みすることとなっており、どこまで収益を改善できるか、トーマス号は再度の危機を救う救世主となるのか成り行きが注目される。

SLは地域振興に役立つのか
 SLが復活してから、走らせることを中止した鉄道会社は今まで無い。20年近くSLの撮影に行っていなかったが、転職して東京に出張に行くようになってから行き帰りに上越線・水上、秩父鉄道、大井川鉄道などに撮影に行った。どの線区でも観光客を満載したSL列車が走っており、集客力の高さに改めて驚いた次第である。上越線の水上駅ではSL列車の到着に合わせて、最近では見ることの無くなった旅館の呼び込みが何人も立っていたし、秩父鉄道では列車を降りた多くの乗客が長瀞川くだりへと移動していた。そうしてみるとSLだけではなく、沿線に観光地などの魅力があることも大切な要素なのだろう。大井川鉄道の沿線でも地元の小さなたい焼き屋や静岡おでんの店がテレビで紹介され有名になっているし、山口線には津和野という観光地が終着にある。
 現在、鳥取県の若桜鉄道でもSLの復活を目指している。本年4月には鉄道そのものを数時間閉鎖し、SLの走行実験を行う予定である。その時間は通常の列車の走行を休止して線路を閉鎖、代行バスを走らせるという熱の入れようで、地元が一体となって取組む一大イベントとなる模様である。また、一昨年の2月には河村名古屋市長の発案の元、あおなみ線でSLを走らせているが、沿線には数万人の見物客が押し寄せている。
 こうしてみると、地域活性化のためにSLを上手に使うことは地域の活性化に非常に有効だと考えられる。今回の地方創生資金でSLを走らせてはどうだろうか。


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