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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

大塚家具のプロキシーファイトと
事業承継における人間関係を良好に保つ4つのセオリー

                                    摩虎羅大将

大塚家具のプロキシーファイトの意義

 家具販売大手の大塚家具のプロキシーファイト(株主総会委任状争奪戦)について、一時報道が過熱しておりました。
 両方に、実はもっと沢山の言い方がありますが、割愛させて頂いて、端的に述べさせて頂きますと、父の勝久元会長の策は、大塚家具の伝統的な強みを十分生かすことをより重視し、娘の久美子社長の策は、ニトリ、イケア等との激化する競争による厳しい経営環境に対応できる変化を重視するものです。
 経営においては何が正しい決断なのかはわかりません。
@父の勝久元会長の策ならうまくいくのか。
A娘の久美子社長の策ならうまくいくのか。
Bどちらの策でもうまくいかないのか。
Cいずれの策でもうまくいくのか。
誰も完全な予想は誰もできません。
 だからと言って、何も意見を言わない、というのはつまらないので、間違いを恐れず私個人の見解を述べていきたいと思います。
 私見では、長期的に見ればCの、両方の策ともうまくいくように思います。
 経営には、必ず決断することが必要であり、決断すること自体が、策の選択以上に重大な意味を持つ場面も多いです。両方が正しいとしても、いずれかを選ぶことが必要となります。私は娘の久美子社長に会社を任せるのが良いと考えています。
 父の勝久元会長、娘の久美子社長、どちらの意見も、対立しながらも、互いの言い分を尊重し、会社の将来を真剣に考え、株主総会という公の場で、堂々と、より説得力を持てるように磨かれています。
 その意味でも、今回のプロキシーファイト(株主総会委任状争奪戦)に意義はあったと、(マスコミは視聴率の取れるような騒ぎ方をしますが)私は評価したいと思います。

事業承継における人間関係を良好に保つ4つのセオリー
 大塚家具の事例を見てきましたが、中小企業経営者の方々は、ここまで、親子で対立することは望まないと思います。
 そこで最後に、このような親子の事業承継における人間関係の摩擦に対処するための4つのセオリーをアドバイスさせて頂きたいと思います。
 
@ 親子に中立な立場の人に、一緒に意見を聞いてもらうこと

 中小企業で、内部対立をしたとしても、第3者の株主はいない場合がほとんどです。今回のように公の場で、説得力を争うプロキシーファイト自体がありません。意見が磨かれないままに、狭い人間関係の中での力の対立だけになってしまう可能性も多くあります。
 しかし、中立な立場の人に一緒に意見を聞いてもらうことになると、お互いに、自分の意見に対して客観性が必要となります。そのこと自体で、歩み寄りが可能になる部分が出てくることになります。
 きいてもらった方からのコメントに期待する必要はありません。むしろ、きいてもらえる形に、お互いの意見を客観的にまとめることの効果を、意識して、期待してください。
 
A 事業継承に至るまでに、できるだけコミュニケーションをとり、後継者を育てること

 難しさがある場合もありますが、中小企業だからこそ、可能な部分も多くございます。
 
B 基本的に、承継したら、口を出さない。手を出さないこと

 3つ目が肝になってきます。承継するまでの準備で、やれるべき事を尽くし、その後は、難しいと思いますが、ある程度、執着心を捨て、信頼して任せることに努めてください。その為にも、自己株式も含めて、できる限り承継しておくことも大切です。

C 会社のことに、口を出しても、出さなくても、家族としての付き合いは、より良い距離感をもって、いい人間を保つこと

 これは、経営というより、人間づきあいの問題ですが、大切です。意見対立しても、仕事が終われば水に流して、良い距離感を持った明るい家族づきあいができれば理想的です。
 また、意見を言い合っても、折り合いをつけるパターンを持つことも良いことです。
 片方がいつも折れる、というパターンになることも多いと思いますが、その後の行動で、いつも意見を通した方が、折れたほうの意見を最大限配慮することで、折れる側も信頼して、折り合いをつけることができます。
 できれば、承継したあとは、親が折れてあげるパターンが望ましいです。その信頼感が後継者を成長させるのです。 


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