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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

日本酒
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日本酒ブーム
 
 日本酒ブームが到来しています。確かに純米大吟醸などの美味しい日本酒がいろいろとあります。低アルコールの日本酒、スパークリングの日本酒、ワイングラスで飲む日本酒などいろいろな日本酒も誕生してきています。また、日本国内だけでなく海外にも輸出されています。私自身も以前はほとんど日本酒は飲みませんでしたが、最近は、日本酒を飲むことが多くなりました。
 私の祖父や父親たちの晩酌はほんど日本酒でした。しかし、だんだんと飲まれなくなり、日本酒の生産高は大幅に減少しました。また、蔵元も次々と廃業しています。日本酒の生産のピークは1973年で1,766千キロリットル(課税移出数量ベース)が生産されており、当時は4,000余りの蔵元がありましたが、2013年では、587千キロリットルとピーク時の3分の1となり、蔵元の数も1,730余りに半減しています。
   

なぜ日本酒は減少したのか

 日本酒が減少しているのにはいくつかの原因があります。
 ひとつは、焼酎やチューハイ等の他のお酒が誕生し多様化したことがあります。昔は日本酒とビールしかなかったのが、いろいろと飲み物が出てきて消費者の嗜好も多様化しています。そのため、最近ではお酒の中における日本酒のシェアーは6.7%(※1)となっています。
  
※1 ちなみに 1位はビールで31.4%、2位はリキュールで25.0%、焼酎は10.5%です。リキュールには、○○サワー、○○チュウハイ、ビールと発泡酒以外のビールが入っています。なお、1975年は、ビールが62.5%で日本酒は27.9%でした。   
 
 次は日本酒も含めたお酒全体の消費が減少しているということがあります。健康志向や若者のアルコール離れ等によりお酒自体の消費量も1996年位がピークであり、最近の消費量はピーク時の8割程度となっています。
 また、日本酒のイメージもあります。どうしても日本酒は「おやじくさい」「おしゃれではない」等のイメージがあり若い人や女性から敬遠され、日本酒離れが起こっているというも減少の要因のひとつです。つまり、環境の変化に対応できなかったということでしょうか。

 
新たな取り組み

 ではなぜいま日本酒のブームなのでしようか。
 ひとつは、日本酒の高付加価値化が挙げられます。日本酒ブームといっても日本酒の生産高自体はまだ減少傾向にあります。しかし、その内訳を見ると、普通酒は大幅に減少しているのに対して、特定名称酒(※2)はあまり減少していなく、逆に純米酒等は増加しています。そのため日本酒全体の中での特定名称酒のシェアーは増加しています。

※2 昔は、特級酒、一級酒、二級酒等と分類されていましたが、1992年からは8種類の特定名称酒(純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒)とそれ以外の酒(通称 普通酒)に区分されています

 また、各地域ですぐれた蔵元がでてきています。山口県の「獺祭」の旭酒造や、 岩手県の「十四代目」の高木酒造等が有名です。これらの蔵は従来の杜氏に頼った酒造りではなく、若手の経営者自身が中心となって酒造りを行っています。それらの蔵元によって美味しい日本酒が造られています。
 また、和食、日本食ブームと合いまって、お酒の楽しみ方も多様化してきているということ
もあります。冒頭に紹介した低アルコールの日本酒、スパークリングの日本酒、ワイングラス
で飲む日本酒等がそうです。昔のコップ酒から比較すると、非常にお洒落になってきています。
また、そのPRもインターネットを活用して行われています。


あらためて乾杯

 過去に何回かの日本酒ブームはありましたが、最近までは日本酒の業界は斜陽産業であると言われてきました。また、日本酒は大手の13社で約半分が生産されており、残りの半分を1,700残りの蔵元で生産しています。その酒蔵の大部分は中小企業です。
 しかし、最近は元気な蔵元が増加し、和食ブームと合いまって日本酒ブームが起こっています。衰退産業と言われる産業の中でも復活する産業もあります。また、すべての蔵元が今のブームに乗れているわけではありません。なにも特色のない日本酒や蔵元は生きていくことが難しいと思います。斜陽産業と言われた日本酒も、新たな付加価値を追加し、自分なりのこだわりの商品、サービスを開発するとともに、それをうまくPRをすることにより成長することができています。

 いろいろとややこしいことを書きましたが、美味しい日本酒が身近に手に入るというのが一番です。美味い日本酒に乾杯! 


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