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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

兵庫の最古の企業とは
                             中小企業診断士 古野 健治

日本最古の企業は「金剛組」

 今日現存する日本最古の企業は、西暦578年創業の「金剛組」と言われている。聖徳太子が四天王寺を建立するに当たり、百済から3人の工匠を招いたが、その1人金剛重光が宮大工として完成後も四天王寺の維持を担った。明治時代の廃仏毀釈により、金剛組は苦境に陥ったが、何とか事業を継続し、今日では高松建設グループの宮大工集団の会社として1400年以上の歴史を重ねている。

兵庫県最古の企業は「古まん」

 東京商工リサーチの調査によれば、兵庫県で最古の企業は城崎温泉(豊岡市)の旅館「古まん」である。717年(養老元年)創業なので、2017年でちょうど1300年の歴史を迎える。当時、新羅から渡来し但馬に定住していた日生下氏が、城崎温泉の開湯に際し、「曼陀羅屋」の屋号で創業したことに始まる。明治時代に別の旅館「まんだらや」が開業したことから「古曼陀羅屋」と改称し、さらに「古まん」に改め今日に至っている。

老舗第2位は「剣菱」

 「古まん」に続く第2位の老舗は、1505年(永正2年)創業の「剣菱酒造」である。当初は伊丹の「稲寺屋」として創業されたが、江戸では関西からの酒は「下り酒」として珍重され、将軍の御膳酒にも指定されていた。ちなみに「くだらない」というのは、関東の酒がうまくないからという説と、関西地元で飲む酒は運搬時の熟成が無くうまくなかったという説とがある。剣菱の現在のロゴマークは江戸時代から使われており、マークの上部が男性、下部が女性を象徴するとして江戸町民が「剣菱」と呼ぶようになり、結果商標名となり、「稲寺屋」の屋号も改称し、本社も神戸市東灘区に移って今日に至っている。 

その他の老舗企業


 第3位も伊丹の酒造会社「小西酒造」である。1550年(天文19年)に薬屋だった小西新右衛門が濁酒の酒造を始めたことによる。やがて濁酒から清酒を製造し、江戸で好評を博したことから酒造を本業とし、馬の背に酒樽を乗せて運搬していた。2代目小西宗宅が運搬途上に見た富士山に感動して「白雪」の商標名が生まれたと言われる。
 第4位は、1580年(天正8年)創業の龍野の「ヒガシマル醤油」である。江戸時代に現在の淡口醤油を誕生させている。
 第5位は、1601年(慶長6年)創業の赤穂の酒造会社「奥藤商事」で、「忠臣蔵」などの銘酒を製造販売している。
 以上の5社が、江戸時代以前から続く老舗企業である。

上場企業の最古は「上組」

 兵庫県の上場企業に限ると、一番古いのは1867年(慶應3年)創業の「上組」ということになる。この年の神戸開港に合わせて、外国人交易の荷物運上所が設置され、「神戸浜中」がその貨物運搬を担った。その後、神戸浜中は東西に分離し、上方(東部)エリアを「上組浜中」が担当し、今日の世界的企業「上組」となった。当時からのロゴの菱形の代紋は、同じ神戸港で同様の業務をしていた山口組の代紋に似ていたのでよく見間違えられたという。

 一般的に、兵庫県が発展したのは神戸開港後の明治期以降との印象が強いが、創業100年以上の企業数では、全国第6位の1207社を数え、近畿でも大阪・京都に次いでいる。大正期には一時、人口で大阪を上回り、東京に次ぐ大県となったこともある。大阪と神戸の中間にある御影・住吉・芦屋に関西財界人の多くが移り住み、今日に至っている。
 2017年は神戸開港150周年に当るが、この機会に神戸の企業の盛衰の歴史に想いを馳せてみては如何だろうか。


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