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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

中小企業の支援について
                              中小企業診断士 村上 顕

私の中小企業支援とのかかわり

 私が中小企業とかかわりをもったのは、新入社員として入社した時に始まります。それ以来、途中の物流関係の業務をしている期間を除き、あしかけ約30年間にわたるおつきあいとなりました。中小企業と一口に言っても大から小までこれまた多数存在しています。最初の中小企業は、化粧品業界の会社や個人事業主でした。新入社員で、飛込販売や飛込での販売代理店づくりを行った経験だけで、経営の数字すら知らない状態でした。しかし、取引先は全件、いわゆる社長や所長です。情熱だけで経営者の心を動かせていたのでしょう。意外と何とかなっていたので不思議です。若さとは恐ろしいものです。その後、医薬品の配置販売業の支援を行うようになりました。これは、卸売り、小売り両方です。この時代には、中小企業診断士の資格もあり、研究会などで鍛えられていてかなりわかったつもりになっていました。M&Aも多数経験しました。

大企業従事者の発想での中小企業支援

 中小企業診断士の方々の場合、大手企業勤務者が非常に多いのではないでしょうか。また、出身者や引退した方々も。ですから、中小企業について知っていそうで意外と知らないのではないかと感じます。診断士協会から来る会報の文章を読んでも、コロナの事態収拾の対策案の文章を読んでも、本当に中小企業のことをわかって書いているのか?と思ってしまうことが多々あります。そのいい例が、今回のコロナでの在宅勤務です。簡単に家で仕事をしてくれという文章がでてきます。大手の社員が家でPCと向き合い、TV会議でやりとりしている光景が紹介されています。中小も同じなのに、やる気がなくてやっていないと思う人も多いのではないでしょうか?しかし、それは大きな間違いです。大手には当然のようにあるインフラは中小企業では、必ずしもそろっていませんし、あっても部分的なものが多いと思います。同じ座標軸で大手も中小もとらえるとピントがずれた支援になるのは当然のことです。

私の経験した中小企業の実態

 私が経験した中小企業は本当に中小というか小というほうがいいと思います。パソコンも一人1台ないような環境です。パソコンはあってもシステムが伴っていないところがほとんどです。大企業には、TV会議システム、ロータスノーツなどのグループウェアはしっかり備わっています。また、情報システムを専門に扱う部署も当然のごとくあります、なくても、全面委託で外部の力を活用しているはずです。こまったらすぐに助けてもらえる環境です。また、顧問の弁護士、社労士、税理士も複数雇い、逐次やり取りすることが可能です。中小企業はといえば、TV会議システムは最近のズームなど活用可能となりましたが、PCの一人1台の支給ができていなかったり、リテラシー教育もなされていないケースは多々あります。大手は、勤怠管理もデータベースで行い、給与もパソコンで支給内容が把握可能、有給休暇の残日数確認や就業規則の確認もすべてパソコンをたたけば瞬時に可能です。しかし、中小はいまだにタイムカード打刻や紙で勤怠を届けたりしています。人員教育も日々の業務に追われほぼ業務の中でなされない以上、時間外労働の撲滅をうたう働き方改革等の影響もあり、他の時間での実施は不可能な環境の企業が多いのではないでしょうか。

大手のインフラ(システム・体制・人員)とのギャップを考えた支援策の必要

 このように中小には、大企業には当然備わっているインフラがないという前提でものを考えて支援策を見出す必要があります。システムもあることを前提とした提案が多数なされているのはなぜでしょうか?また、業務の体制でも大手は、一気通貫のきれいな全社的なフローになっています。一方、中小の場合は、部分最適で各部署ごとに完結して他部署への連携を考えていないフローも散見されます。そういうところを改善する案ができているのでしょうか?人員の教育はどのようになされる必要があるのでしょうか?そもそも経営者とて経営の数字や法律を十分理解してもらわなければいけません。大手なら、いくらでもブレーンがいますから、役員がそこまで知らなくても大丈夫かもしれません。しかし、中小は本来そうではいけないのですが、中小こそ創業者の経験と勘の経営がまだ根強い感じです。最近は、若い経営者にはそのあたりをよく理解したひとも増えていますが。でも、常識や法律を知らず、不法行為に陥ってしまうこともあるのです。

まとめ

 このように、大手では当然と思えることも中小では不十分なケースがほとんどであるということを理解してやっていかなくてはいけないということ。それから、総論ではなく、各論をもとめているのが中小企業だということです。総論を振りかざしていいことを述べても、個々の企業にあった各論が提示できて初めて役に立てるということを理解しておかねばなりません。そのあたりを踏まえた支援を行っていけるようにしたいものです。
 

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