本文へスキップ

神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

地球温暖化対策に思うこと
                                     DAHDA


地球温暖化とは

最初に地球温暖化の仕組みについてインターネットから得た情報に基づく私の解釈を紹介します。
莫大なエネルギーを持つ太陽光(電磁波)は地球に到達した内の3割が宇宙にそのまま反射され、2割を大気と雲が吸収し、残り5割は地表と海面で吸収される。吸収された太陽のエネルギーは熱となって地球の温度を上げるが、最終的には大気や雲、地表等から赤外線として宇宙に放射され、宇宙から見た時の地球のエネルギー収支のバランスが保たれて、気温も一定値で落ち着く。もし、地球表面を覆う大気と雲の赤外線吸収量が増加すると、「地表から直接宇宙へ放射される赤外線」は減少し、大気温度は上昇するが、温度が上昇することにより「大気、雲が宇宙の方向へ放射する赤外線」が地球のエネルギー収支がバランスするところまで増えて温度は一定となる。つまり、「大気の赤外線吸収能力が上がると地球のエネルギー収支がバランスするまで気温が上昇する。」ということになる。

(下図はNASAの地球のエネルギー収支の説明図)


大気圏に存在し、赤外線を吸収する物を温室効果物質と呼び、その多くの割合を占める気体状態の物を温室効果ガスと呼んでいます。なお、大気の主成分であるN2とO2 は、単一の原子で構成される分子構造であるために赤外線を吸収しないので、温室効果ガスではありません。もしも温室効果物質が大気中に含まれないと、気温は33度(ケルビン)低くなるといわれており、逆に大気中の温室効果物質が増えると大気の温度はより高くなります。人類の活動によって温室効果物質が増え、その結果として気温が高くなる現象が最近問題になっている地球温暖化です。

自然現象としての地球の気温変化

地球表面の温度を決める支配的な要因は太陽活動ですが、年単位の平均気温の変化へ影響を及ぼす要因には太陽活動以外にも巨大隕石の落下等、様々な説があります。しかし、いずれもが十分に立証されたと言えるものではありません。気温変化について科学的におそらく事実であろうと見做されていることとしては、数億年の単位で地球表面に氷で覆われた地域がない温室時代と地球表面に氷で覆われた地域が存在する氷河時代が繰り返されていること、氷河時代の中で数万年の単位で今より寒冷な氷期と間氷期が繰り返されていることがあります。現在は間氷期で、今後どこかの時点で徐々に気温は低下し始め、5万年後くらいには再び氷期になるのではないかと考えられています。また、もっと短い周期の気温変化に深く結びついているのが火山活動であることもほぼ確かなようです。火山灰の雲は太陽光を地表に到達させずに反射してしまうので、これで地球が覆われると気温は下がります。大噴火で大量の火山灰が放出されると気温が下がり、火山灰が地表に落下すると噴火で放出された温室効果ガスだけが残って気温が上昇するという短周期の気温変化を繰り返してきたと言われています。「自然のスケールにはとても及ばないから、人為的な温室効果ガスの増加を気にしても意味がない」と言う人もありますが、本稿後半では、今そこにある危機として現在進行中の人為的な温暖化について考えることにします。(危機管理上は、未曾有の大噴火により数年以上続く日照低下とそれに伴う気温低下にも目を向け、その場合にどうするかのプランを作っておくことも必要です。)

温室効果ガス

温室効果ガスとして話題になるのはCO2(炭酸ガス)ですが、大気中の温室効果ガスで温暖化に最も寄与しているのはH2O(水蒸気)で、その寄与割合は約5割、CO2(炭酸ガス)は2番目で約2割です。水の微粒子からなる一般的な雲は太陽光を反射して低温下に寄与する一方で、同時に温室効果物質でもあり、雲のH2Oを加えるとH2Oの温室効果への寄与割合はさらに大きくなります。それでは、なぜ温室効果ガスとして問題にされるのがH2Oの半分以下しか寄与割合がないCO2なのか。その理由は、大気中のH2Oの発生は海からの蒸発がほとんどで人為的な発生の割合は微量であるのに対して、CO2の発生は化石燃料の燃焼による人為的な発生が支配的で、生物の呼吸等による自然の発生は相対的に小さいからです。言い換えるとH2Oの発生を減少しようとしても不可能ですが、CO2の発生を減少させることは可能だからです。また、H2Oは飽和蒸気圧の関係で増加しすぎると雨になって地表に戻るから温室効果ガスとして増え続けることはないということもあります。その一方で、気温が上がれば上がるほど飽和蒸気圧が上がり、海面からの蒸発量が増えて大気中の水蒸気が増えるために、H2Oは気温上昇についてポジティブフィードバックをかける厄介な存在でもあります。このポジティブフィードバックを押さえ込むためにも、CO2の発生を速やかに低減することが必要です。

カーボンニュートラルと脱炭素社会

カーボンニュートラルは、もともとは、木を燃やして出るCO2の量と木が吸収するCO2の量をバランスさせるという意味で、大気中のCO2が増えも減りもしない中立(ニュートラル)の状態を意味しています。産業革命以前の状態と言い換えてもよいでしょう。一部の国では化石燃料を燃やすことで出てくるCO2について、ガスとして放出しなければよいとして、CO2を他の物質に吸収させて埋めるという「臭いものに蓋をする」ための研究開発が進められています。その一方で、一部の環境先進国では化石燃料によるCO2の新たな発生自体をゼロにしようと再生可能エネルギーの開発が盛んに行われています。脱炭素(化石燃料を使わない)社会を志向することは「臭いものは元から絶たなきゃダメ」の考え方です。ちょっと脱線しますが、各国のカーボンニュートラルへ向けての姿勢と原子力発電とその廃棄物に対する姿勢を見ると、国毎の「蓋をする」のか「元から絶つ」のどちらを志向するのかが化石燃料の燃焼と原子力発電で共通しているように思います。進む道を決める際に、短期的な利益を重視するか、少し長いスパンで利益を見る、あるいはより良い未来を志向するかの違いなのか、それとも科学的・論理的に物事を考える人の意見が通るか通らないかの違いなのか ---。

2050年カーボンニュートラル

パリ協定での各国目標では温暖化抑制は十分ではないということで、目標の見直しが求められていますが、日本政府は目標見直しを無視したまま、昨年「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。この宣言でのカーボンニュートラルの定義はハッキリしないのですが、大気中への化石燃料由来のCO2排出量をゼロにするという意味で使用していると推定されます。経産省の資料によれば、排出量ゼロに向けて以下のようなことが謳われています。
  (1)電化を進める
  (2)電化仕切れない熱需要は化石燃料のCO2回収と水素化で対応する
  (3)発電は半分を再生可能エネルギー(洋上風力+蓄電)で賄う
  (4)発電の残り半分を水素発電、従来火力+CO2回収、原子力で賄う
  (5)オフィス、住宅用の電力は新型の太陽電池で個別に賄う
CO2排出量ゼロを目指すことに異論はありませんが、2030 年の目標はどうするのか? 水素化で排出されるH2Oは温室効果物質そのものであるが温室効果を高めずに水になって地表へ戻ることが立証されているのか? 回収したCO2を将来にわたってどうするのか? 放射能のリスクをおかしてまで原子力にお金を使い続けるのか? 等々個人的には疑問だらけです。既に開発を決めたこと、既に多量の資源を投入してしまったことを、あれも残す、これも残すではなく、科学的、論理的に考えつくした上で、将来を見据えて最も適切な方法に資源を集中する。もし途中でより効果的な方法が見つかれば、それまでに投じた資源がどれだけ大きくてもサンクコストと考えて方針を切り換えるという姿勢で事に当たらないと、この困難な課題「地球の温暖化」を解決することはとても叶わないと思います。
 


NPO法人 ビジネスアシストこうべ