本文へスキップ

神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

マイナンバーシステムに思うこと
                                     DAHDA


マイナンバートラブルの背景

 健康保険証としてマイナンバーカードを使わない人には別途確認カードを発行するという意味不明かつ税金無駄使いのニュースが流れていますが、マイナンバーカードを使おうとしない背景として、マイナンバーカードで住民票を出力したら他人の住民票が出てきたとか、健康保険証として使おうとしたら他人の情報が表示されたとか、公金振込用口座に他人名義の口座が登録されている例が多数あるというようなことも報道されています。
 これらは入力時のミスが原因なのでミスを回避できるように、入力要領を守らせることを徹底するとか、チェックシートを整備するという様なことも言われています。しかし、人為的なミスを人に頼った方法で解決しようとすることには無理があり、これらの対策は根本的なものとは言えません。このようなシステムを開発する際には「役所、役人は間違いをおかさない」というナンセンスな前提は放棄し、「機械は壊れ、人は間違うことがある」の大原則を前提にしておく必要があります。

人為ミスや故障を前提とした品質管理

 ITに限らず、操作を間違ったり、入力を誤ると重大な災害につながるようなシステムを開発する際は、リスク分析を徹底し、事前に対策を構築しておかねばなりません。機械系では以前から、FMEA(failire Mode and Effects Analisis 故障モード影響分析)という手法が提唱されており、開発段階で、どれかの部品が壊れた時や何かの操作を誤った時の影響範囲を調べ、重大な事態に陥る場合は、その対策を事前に設計へ反映するようにしています。今では、コンピュータシステムでも似たような品質管理手法がとられ、発注者または発注者から依頼された第三者機関は、システム開発業者が作成したレポートを参照することで、考え得るシステムの不具合や人為的ミスが起きてもそれをカバーする対策が取られていることを確認することが常識になっていると思います。ところが、伝えられるマイナンバーシステムの問題は、どれもが容易に考え得る人為ミスであるにもかかわらず、人に頼った対策しか取られていなかった様に見えることから、入力手順や入力された情報に誤りがある時にアラームが出るようになっていないことがマイナンバーシステムの最大の問題であるように外からは見えます。

戸籍法上の問題と自治体任せ

 既に指摘されていますが、その原因の一つとして、法令上は戸籍に記載されるのは名前の字だけで、それをどのように読むかは記載されていないために入力チェックを難しくしていることが挙げられます。厚労省の出生届けの様式サンプルには、現在は読み方欄があるとのことですが、法令上の根拠がないために自治体によっては未だに読み方欄のない出生届を使用しているところもあるとか。このことから、マイナンバーに紐付けられた名前の字はあるが、その読み方はマイナンバーに紐付けられたデータとして登録されていないと推定できます。読みが登録されておれば、他人の口座が公金振込用口座として登録されてしまうというミスはかなり回避出来たのではないでしょうか。もし、この壁が超えられずに入力ミスのチェックをシステム上行うことが困難であると分かっていたのであれば、システム開発者はこのシステムの開発を請けるべきではなかったと考えます。FMEAで重大な結果を招く不具合が常識的に考えて許容出来ない確率で発生すると分かっていながら、対策を施さずに製品を世に出すのは犯罪に等しい行為であり、システム開発でも同様であると言えるでしょう。
 さらに、住民票出力のシステム等は国が作ったのではなく各自治体任せで、自治体によって異なる業者のシステムを使用しているとのことで、これも大きな問題であると思います。小さな自治体に経験豊富なIT担当者を期待するのは無理なことは目に見えています。中央省庁の口は出すが責任は取らない体質を変えねばならないのでしょう。

それでもマイナンバー(DX)は進めるべき

 自分のマイナンバーカードを申請する際に名前をカナで書いたかどうかを覚えていませんが、実際に名前の読みがマイナンバーに紐付けられていないのなら、法令を改正して、マイナンバーカード発行時に暗証番号だけでなく、名前の読みを登録させるようにしておくべきだったと考えます。次回のマイナンバーカード発行時(交換時)には、名前の読みをデータとして持てるようにすべきでしょう。また、入力ミス対策が不十分なシステムを入れ替えることも必要でしょう。
 ただ、DXの遅れが甚だしい日本において、マイナンバーカードによるサービスを現時点で凍結すべきではないと個人的には考えています。根本的な問題解決に向けた法改正等を早急に進めつつ、多少強引であっても、ミスが今後も発生する前提で、ミスが発見された時の対応を決め、各種サービスの開発と普及に全力で取り組まないと、日本はデジタル後進国つまりは経済後進国への道をこれからも突き進むことになると危惧します。

 


NPO法人 ビジネスアシストこうべ