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SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

中小企業経営者の保険 パートU
 〜リスク・事業承継に備え 節税しつつ 退職金を貯め 従業員の福利厚生を〜
                                    摩虎羅大将


前回、「中小企業経営者の保険」をここに掲載してから11年が経ち、より総合的に表題について論じることで、大幅に内容が充実できることや状況が変化している事柄もあるので再論に及びました。テーマは中小企業経営者によく利用される保険・共済です。

概要

1.経営者に有利な共済・税制が存在する理由(事業継続、従業員の幸福) 
2.法人税を節税しつつ、役員報酬より有利な社長の退職金の原資を作る
3.小規模企業共済 ~社長の退職金の原資を作る
4.中小企業倒産防止共済 ~連鎖倒産に備え 社長の退職金原資にも
5.長期平準定期保険  → 税務優遇が実質的になくなる大きな税制の変更!
6.逓増定期保険 → 税務優遇が実質的になくなる大きな税制の変更!
7.法人契約の社長の終身医療保険 ~個人への終身医療の現物支給
8.社長個人契約の後継者受取人の生命保険
9.全額損金の定期保険や収入保障保険 〜社長死亡のリスクに備える
10. ~閑話休題〜 海賊を守る!?海賊保険 → 後日掲載予定
11.従業員の退職金制度 
   ~退職金規定と従業員退職金の原資作り
12.中小企業退職金共済
13.ハーフタックスプラン 〜従業員の為の養老保険
14.確定拠出型年金(401K)
15. 法人契約の従業員の医療保険 〜福利厚生

本稿パートUでは6.〜を論じます。

6.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)~連鎖倒産に備え 社長の退職金原資にも

中小機構の中小企業倒産防止共済 (経営セーフティ共済)は中小企業 (50〜900人以下:業種による)の連鎖倒産を防止するために国が運営する共済(62万事業者加入=19万増加:中小企業数380万)です。

メリットは以下等です。
@取引先が倒産して売掛金が焦げ付いたら、すぐに、積立の上限800万円なら
最大10倍の8000万円まで、無担保・無利子で共済金の貸し付けが受けられる。
返済期間も5〜7年と余裕がある。
A1年以上なら8割以上の解約手当金があり、40ヶ月(3年4ヶ月)で100%になる。
B倒産の危機以外にも、解約手当金の上限の95%まで、0.9%で無担保の貸し付けが受けられる。返済期間は1年。
C掛金を全額損金算入(年240万円 合計800万円まで)。1年先まで前納できるので
決算前に多くの利益がでそうなときに、前納を選択することができる。
D社長の退職金の原資にも有効。

注意点は以下等です。
@掛金総額800万円になれば全額解約手当金として受け取れるが、雑収入として益金算入されるので、解約は大きな赤字が出そうな時や退職金等の大きな支出のある時にする。
A共済金を借りると その1/10の掛金総額が失われる。
共済金の受取りは最終手段と考えるのが賢明です。

7.法人契約の社長の終身医療保険 ~個人への終身医療の現物支給

解約返戻金のない法人契約の 社長の終身医療保険は しっかりメリットはあるのに デメリットが少ないのでおすすめ。

メリット
@経営者が傷病で働けなくなるリスクをカバー
A全額損金算入が認められている。2019年10月8日の改正以降、保険料払込期間を短期払いとする契約について、被保険者1人あたりの年間保険料の通算が30万円以下の場合も損金算入が認められました。この保険料の取り扱いは2019年10月8日以降の契約から適用となりますので、適用以前に同じような契約に加入している場合は通算されません。被保険者1人あたりの年間保険料の通算が30万円を超える場合は、保険料払込期間中は、支払保険料のうち「年間保険料×保険料払込期間÷保険期間」で算出した金額を支払保険料として損金算入、残りは前払保険料として資産計上。
終身タイプの第三分野保険の保険期間は「116歳−契約年齢」で計算。
B会社が掛金を全額支払った後で社長個人へ退職時に名義変更が出来る。贈与税は解約返戻金で評価するので非課税。掛金なしで、一生涯医療保障が受けられる。


8.社長個人契約の後継者受取人の生命保険

社長個人契約の後継者受取人の生命保険金は、財産分与と別に後継者に入るので、後継者の自社株式取得の援助に有効です(相続人数×500万円が非課税)。

9.全額損金(無解約返戻金)の定期保険や収入保障保険 〜社長死亡のリスクに備える

安い掛金で、 大型保障を確保出来るため、中小企業の経営をさせる目的にも、税制優遇の目的にも、最もかなった保険です。しかし、貯蓄性がないため、含み益を持つことや、社長の退職金準備・資産形成にはなりません。

目的
経営者死亡時に事業継続が困難となるリスクに備える。だから全額損金算入
掛金も解約返戻金のある保険より安いので、利益が沢山出ている前提の長期平準定期保険や逓増定期保険よりも、必要性は高い。収入保障保険の方が掛金が安い。貯蓄性はない

10.~閑話休題〜 海賊を守る!?海賊保険 → 後日掲載予定

11.従業員の退職金制度 ~退職金規定と従業員退職金の原資作り

退職金規定を作る→
長く会社に貢献することにメリット→
勤労意欲・人材定着→
会社の業績向上

12.〜14.で従業員退職金の原資作りの話

12.中小企業退職金共済

●加入目的は従業員の退職金支払い原資確保のためで、税制でも優遇されています。
中小企業退職金共済制度は、中小企業退職金共済法に基づく、中小企業のための国の退職金制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。その意味で、安全・確実で、税制も優遇されていて、有利です。
管理が簡単な退職金制度が手軽に作れ、従業員の福利厚生を効率的に高めることができるので、経営的にも有効です。

新規加入の助成
新しく中退共制度に加入する事業主には (1)掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金月額(掛金月額4,000円以下)加入者については、(1)に掛金月額2,000円の場合は300円。3,000円の場合は400円。4,000円の場合は500円を上乗せして助成します。 ( ※ただし、次に該当する事業主は、新規加入助成の対象にはなりません。 同居の親族のみを雇用する事業主。社会福祉施設職員等共済制度に加入している事業主。適格退職年金制度から移行してきた事業主。)

増額の助成
掛金月額が18,000円以下の従業員の掛金を増額する事業主に、増額分の3分の1を増額月から1年間、国が助成します(20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。 ※同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象にはなりません。)( ※中退共制度に加入した企業に対して、兵庫県では加西市、丹波市などが、独自の補助金制度を設けています。)。
税法上の特典:掛金助成制度
中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります(※資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されますのでご留意ください。)。

過去勤務期間の通算は、企業間を転職しても可能で、特定業種退職金共済制度や特定退職金共済制度とも通算できます。退職金は、退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます。

中小企業(50〜300人以下又は資本金5000万円〜3億円:業種による)の
従業員の退職金を、簡単な管理で用意できる国が運営する有利な共済です 。
(37.9万事業所加入:中小企業数380万)

メリット
@従業員が2年勤務すれば 掛金総額を上回る退職金(月掛金3万円まで可)。
A3年6ヶ月を超えて 長ければ長く程、効率良く増える。予定利率1%(2024年現在)
B全額損金算入 給与所得としての課税もない。
C退職金の支払い時に益金も損金もない。
 積み立て不足もない。会社にリスクが少ない。
D中退共と提携する施設を割引料金で利用できる。
E新規加入や増額に1年間、国の助成金が出る

注意点

@減額しづらい。払い込んだら 取り戻すこと不可能。適切な掛金を。
A2年未満はマイナス。 出入りの多い職場は×
B懲戒解雇した従業員にも支払われる

13.ハーフタックスプラン 〜従業員の為の養老保険

ご存知のように、養老保険とは 満期金と死亡保障が同額の保険。
解約返戻金もあり、満期に近づくと100%に近づく。
死亡保障は遺族が受け取り、満期金は会社が受け取って退職金に充てる。

従業員の福利厚生のためなので福利厚生プランと呼ぶ。
 だから、貯蓄性があるにもかかわらず掛金の1/2の損金算入が認められている。
そこで、別名がハーフタックスプラン。

@福利厚生プランは従業員全員を被保険者とする必要がある。
A福利厚生規定を必ず整備する。
Bコンスタントに営業利益が出る前提。

メリット
@保険料の1/2を損金算入で退職金準備。
A満期金・解約返戻金を充てることで、 退職金支払い時の赤字のリスクを小さく。
B退職金給付規定を柔軟に設定出来る。
C遺族に従業員の死亡保障を用意。
D緊急時は契約者貸付も(金利3%位)

注意点
@適切な保険料設定を。退職金規定は作ったら撤廃は難しい。掛け過ぎ注意。
A従業員の出入りが激しいと損
B全従業員の加入が必要
C従業員の大部分が同族関係者などの場合は認められない
初年度は解約返戻金が0%。1年後は75%(例)

14.確定拠出型年金(401K)

退職金支払い時に原資が不足するリスクもなくメリットも多いが
管理費用・教育費用がかかるので、中小企業には現実的ではない。

15. 法人契約の従業員の医療保険 〜 福利厚生

従業員の福利厚生→
勤労意欲・人材定着→会社の業績向上
基本は在職中→定期医療保険
退職時に現物支給なら→終身医療保険

注意点
@原則全従業員対象→ 入れ替わりが少ない前提
A受け取り人は会社 (個人だと社会保険料や所得税がかかる)
B福利厚生規定を定めなければならない。

これらの保険・共済は経営者と従業員の生活設計を支援しながら、国の補助や、税制面の優遇があるので、利用目的を明確にしながら、上手に利用したいものです。

本稿は2018年8月と2019年10月にビジネスアシストこうべにおいて行った「中小企業経営者のための保険」セミナーを再構成・加筆修正したものです。

参考文献:
株式会社タックス・コム発行 小山 浩一著「中小企業のための保険講座」 
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
「経営者従業員のためのデータ集ーマネジメントデータ&ガイドー」
岩波新書 増田 義郎著「略奪の海カリブ」 
参考インターネットサイト:
中小機構ホームページ 
中小企業退職金共済事業本部ホームページ 
国税庁ホームページ
「法人保険の楽園」
「保険の教科書」(ファミリーコンサルティング株式会社)
「保険相談&見直し情報サイト 保険のビュッフェナビ」
「経営者のための生命保険コラム」株式会社汐留総合研究所
「B−PLUS 仕事を楽しむためのWEBマガジン」八木 昭浩
「保険工学」株式会社保険工学                 



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