本文へスキップ

神戸を中心とした地域社会に貢献するNPOビジネスアシストこうべ

SMECアイ−診断士の視点−ESSAY

身体遣いから考えるマネジメント
                                     WEB担当

はじめに

 私の趣味は合気道と大道芸です。合気道は30数年、大道芸も20数年、飽きずに、50代半ばを過ぎた現在も続け、少しでもパフォーマンスのレベルを上げたいと努めています。古武術で有名な甲野善紀さんは年齢を重ねることについて、「若いころと比べて、瞬発力やパワーは衰えたけれど、現在の方が、身体は遣えている」と仰っていましたが、私もそんな風に思える時があります。現に以前はできなかった、脚の180度前後開脚ができるようになるなど、進歩していると思える部分が今でもあります。
 
パフォーマンスを向上させるには

 パフォーマンスを向上させるためには、身体への理解が不可欠だと考えています。人間の体には約200の骨と約500の筋肉があるといわれています。もちろん、すべての名前と役割を覚えているわけではありませんが、主要な骨と筋肉について、意識をし、身体の中のセンサーを研ぎ澄ますことによって、合気道の技や大道芸の表現を向上させてきました。
 力を抜くこと、身体の中心を意識すること、とりわけ重心と重力を感じること、これらのことはすべての身体遣いに共通する重要な要素ですが、合気道・大道芸の稽古を重ねるたびに「自分は自分の身体さえ、思い通りに遣いこなすことができていない」ということを痛感します。けれど、稽古は裏切らないといわれるように、ふと上手くできることもあり、また、稽古を重ねるごとに、上手くできる再現性の確率が上がっていくことを実感することができ、それが楽しくて、今でも継続しています。
 
マネジメントとの関連性

 企業経営で使われるマネジメントの語源はラテン語で手を意味する「マヌス」で、自分の手のように道具を使いこなす、野生の馬を御す・手綱をとるという意味に転換していったということのようです。現在では、マネジメントの意味は人を使いこなすことのように受け取られていることが多いように思えます。
 自分ではない、他の人を上手く使いこなす、しかもそこに組織の業績を上げることが至上命題として課されたとき、人はたやすく、威嚇したり、大きな声を出したり、無視したりという圧力をかけるハラスメント行為に陥る可能性が高くなるのだと考えます。
 しかし、合気道・大道芸の稽古人である私は、「自分の身体さえ上手く使いこなせないのに、ましてや他人を簡単に手足のように使えるはずがない」と考えます。
 
成果をあげるためには

 身体遣いのパフォーマンスを上げるためには、身体各部位との絶えざる会話が必要だと考えています。とりわけ、約200の骨と500の筋肉との調整は不可欠です。自分の身体に無理に負荷(圧力)をかけた場合、稽古前の軽いストレッチングでさえ、筋肉を傷めてしまうことは明らかです。
 けれど、多くのマネジメントの現場では、まさに他人事として、他の人を自分の思い通りに動かそうとしていることが多いのではないでしょうか。挙句の果てに「できないのなら、できる奴に変える」などという人事権を使った圧力をかけることも見受けられます。自分の身体のパフォーマンスがあがらないからと言って、自分の手足を切って変えることなどできはしないのに・・・・。

人と組織との絶えざる会話こそ必要

 日本の製造業では、摺合せ技術が特に優れているといわれてきました。これはまさに、個人が身体のパフォーマンスを向上させるために行うことと同じで、組織全体をひとつの有機体(体と同様なもの)と考えて、組織の各部署間の連携を密にし、前工程部門は前工程部門のみが都合の良い方法に固執するのではなく、後工程部門のことを考えて、組織がベストパフォーマンスができるように調整していくこと、そしてそれを継続し続けることで、組織として、成果を上げ続けるということです。
 身体遣いのパフォーマンスは簡単には向上しなくて、さらにある程度のレベルになれば、さらにその上に行くには、さらなる稽古が必要になります。これと同様に、組織パフォーマンスの向上も、組織構成者・部門の間の絶えざる調整・対話が必要であると考えます。



NPO法人 ビジネスアシストこうべ